120年ぶりの民法改正によって、賃貸における修繕義務と費用のルールも変わります。
貸借人や賃貸人のそれぞれが、修繕義務と費用がどのように変わったのか知っておく必要があります。
変更点を知らないと、余計に修繕費用を支払うなど、必要のない負担を強いられることになる可能性があるため注意が必要です。
ここでは、民法改正に伴う賃貸の修繕義務と費用の変更点について確認していきましょう。
現行の民法には貸借人の修繕権がない
改正前の民法では、貸借人の修繕権についての規定はありませんが、民法606条で賃貸人の修繕義務が規定されています。
賃貸人は貸借人から家賃をもらっているため、建物を使用させる義務があります。
そのため、クロスの剥がれ、雨漏り、設備故障など、建物に修繕が必要な箇所があれば、賃貸人は修繕をしなくてはいけません。
一方で、貸借人は家賃を支払い、賃貸人の所有する建物を借りている状態です。
もし、修繕が必要な箇所があり、賃貸人にお願いをしても相手にされないからといって、勝手に修繕をしてしまうと契約解除を求められる恐れがあります。
なぜなら、貸借人が賃貸人の建物を勝手に改造・変更したとみなされるためです。
そのため、貸借人としては賃貸人にお願いをし続けるしかありませんでした。
しかし、賃貸人としては極力コストを抑えたいと考えていることもあり、任意に建物を修繕しないことがあります。
この状態では、貸借人の保護に欠けるため、民法改正によって貸借人の修繕権が新設されるのです。
改正後には貸借人の修繕権が新設
2020年4月に改正民法が施行されると、貸借人が修繕できるようになります。
具体的には、貸借人が賃貸人に修繕の必要性を伝えたにもかかわらず、賃貸人が相当の期間経っても修繕を行わない場合は、貸借人が修繕することが可能です。
修繕にかかった費用は賃貸人が負担することになります。
また、賃貸人が相当の期間経っても修繕をしない場合だけでなく、急迫の事情がある時も貸借人が修繕することが可能です。
賃貸人にっても重要な貸借人の修繕権
改正後に施行される貸借人の修繕権は、貸借人・賃貸人どちらにとっても重要な内容です。
賃貸人の場合は、どこまでの修繕を賃貸人が負うのか、小さな修繕は貸借人が負担するのかなど、細かい部分を決め、契約書に明文化することが大切になります。
明文化していないとトラブルになる可能性もあるため注意が必要です。